世界の小澤

 ウィーン国立歌劇場音楽監督小澤征爾(70)が再始動した。6月下旬、「スイス国際音楽アカデミー」に姿を現した小澤は顔色もよく、9日間にわたって世界中から集まった生徒たちを指導し、最終日にはコンサートを指揮。今回は講師として現場復帰となったが、今月20日から行われる「小澤征爾音楽塾」で国内にもその雄姿を披露し、いよいよ本格的に活動を再開することになる。(小谷猛)

 今年1月半ばから帯状疱疹(ほうしん)で都内の病院に入院するなど指揮活動を休止していた小澤は、スイス西部のブロネイで行われた「スイス国際音楽アカデミー」で活動を再開した。6月28日から7月6日まで行われた同アカデミーで元気な姿を見せ、「ご迷惑をおかけしましたが、これから徐々に活動を始めたい」と開口一番に話し、初日から精力的に指導を行った。

 昨年から始まった講習会には、バイオリンのパメラ・フランク、ビオラ今井信子、元東京クヮルテットのチェロ奏者、原田禎夫も講師として参加し、弦楽四重奏と弦楽アンサンブルを中心にレッスンが行われた。生徒は27人。昨年12月にドイツのケルンで行われたオーディションで選ばれ、国籍は15カ国に及んだ。「参加している生徒のレベルが非常に高い。室内楽を中心とした音楽づくりを教えたい」と小澤。

 講習会3日目からは弦楽アンサンブルを指揮。復帰後初めてとなる指揮は、病み上がりとは思えない躍動感に満ちたもの。「若い人を教えるのは面白い。やみつきになる」と喜びを語る小澤は、ジョークを交えながら的確に指示を出し、生徒たちから次々と音楽を引き出していく。最終日にヴヴェイのカジノで行われたコンサートではモーツァルトのディベルティメントK136、チャイコフスキーの弦楽セレナードなどを披露。講習会の成果を熱のこもった演奏で披露して、聴衆から大きな拍手が寄せられていた。

 「スケジュールが過密になり、とりわけ昨年後半にコンサートが集中した。結果的には神様からもらったお休みだと思って休んでいました。今後はできるだけ間隔をあけて、本式にスケジュールが戻るのは来年の3月くらい」と話す。

 また、6月13日に亡くなった指揮者の岩城宏之氏について話が及ぶと、「僕が休んでる間に岩城さんが亡くなるなんて全く心細い。非常に悲しい。年末のベートーベンの交響曲全曲演奏、そして、日本人の作品を紹介する意欲は素晴らしかった」とその死を悼んだ。

 日本国内では「小澤征爾音楽塾」のマーラー交響曲第2番で姿を見せ、当初の予定通り8月にはサイトウ・キネン・フェスティバルに出演し、メンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」などの大曲が控えている。さらに来年3月にはウィーン国立歌劇場でタクトを執って、世界のフロントライン復帰を果たす。


 小澤征爾再始動の詳報と独占インタビューは20日発売の「モーストリー・クラシック」9月号に掲載されます。

【2006/07/16 東京朝刊から】

 世界の小澤、健在ですね!!